皆様、お久しぶりです。
今回は、ハモりと音域の概念について、そして男性と女性それぞれの組み合わせでハモる場合に、上ハモり・下ハモりどの音域がハモりやすいのかを考察したいと思います。
歌うときの音域について
まず、以下の図をみてみてください。ピアノの鍵盤に、男性と女性のキー・音域について記載したものです。
こちらの音域は、裏声やファルセットは考慮していません、あくまで地声に近い声で出せる音域です。なお、音域は人それぞれなので、あくまで目安だと思ってください。主観も大いに入っているので、細かいツッコミはご容赦を。
男性と女性の音域
男性の高音域
男性ですが、低い音は下のソ:G2(lowG)から出せて、高音は上のソ:G4(mid2G)くらいまで出せるような音域だと思います。主観にはなりますが、男性の場合はいろんな曲を聴いていても、特にG4を超えると高い曲、ハイトーンというイメージがあります。
例えば、以下のような音がA4です。どれも綺麗に張った音で当てている、ハイトーンボーカルのイメージじゃないでしょうか?
- 粉雪/レミオロメン サビの出だし「こ”な”〜♪」のロングトーンの部分
- 全力少年/スキマスイッチ サビの「止め処ない血と汗で渇いた脳を潤せ〜♪」の最後の”せ〜”の音
- 栄光の架け橋/ゆず サビの「えいこうの〜かけはしへと〜♪」の”うの〜”の部分
- チェリー/スピッツ サビの「愛してる〜のひびき〜だけで♪」の”き〜”の音
これを原キーで地声でポーンと出せるとすごいと思います。
ということで、一般男性はG4までが出せる音域、無理をせずに気持ちよく出せるのはF4くらいまでではないでしょうか?例えば、カラオケでもA4の原曲に対して−3下げでF#4が最高音になるように音源が調整されているイメージです。
なお、男性の中にはあり得ないようなハイトーンボイスのボーカルもたまにいます。このようなボーカリストはそもそもの声帯の作りからして女性に近いような構造なんだと思っています。(努力でどうにかなるものではなく、もう天性の声ですね)男性も女性も同じ人間なので、女性に近い声の男性や、逆に男性に近い声の女性はいるものなので、そういう意味では、女性のようなハイトーンの男性、男性のような低い声の女性がいるのです。
一方で、女性を超えるハイトーンは、もはや人間ではない(?)ので、なかなか存在しないと思っています。
女性に近いようなハイトーンで歌っている男性曲としては、以下のような曲があります。(もはや凄すぎて参考にならないですねw)ファルセットは除外して地声に近い音で出している音ですよ。
- さよなら/オフコース 「さよなら〜」の”なら”、B4
- The Beginning/ONE OK ROCK 「Just tell me why baby」の”tell”、C5
- Pretender/Official髭男dism 「君の運命のヒトは僕じゃない」の”な”、C5
- 紅/X(Toshi) 「紅にそまった」の”そ” 、D#5
※これはあのInto the unknownのハイトーンと同じ音です、変態ボイスですねw
男性の低音域
逆に低い音も人それぞれですが、あまり低い音域だと気持ちよく歌えないと思います。
声は基本的に声帯の振動が音源となるので、大きな音を出そうとして空気量を増やすと、振動しやすくなってしまって、つまり低音のままでは耐えられなくなってしまいます。気持ちよく発声するにはある程度の空気量で張った音を出すことになります。ですので、低音は”抑えて”歌わないといけないため、気持ちよくなく、そういう意味で難しいのです。そっと出さないと低音は出ない、と感じませんか?
男性が気持ちよく歌える音域
男性が気持ちよく歌える音域は、主観も入りますが、G3〜F4くらいの音域だと思います。この音域だと高くて無理してる感もなく、逆に低すぎて抑えている感もなく、自然に大きな声で気持ちよく歌えるのです。
また、後述しますが、低すぎる音域はハーモニーを感じづらいということもあり、つまり伴奏に対して歌っている気持ちよさが失われやすい、ということもあるのです。
女性の高音域
さて、次に女性の音域ですが、同様に真ん中のファ:F3(mid1F)あたりから、高音は上のレ:D5(highD)あたりまでではないでしょうか。
女性の歌を聴いていると、ファルセットなどをのぞいて、張った声ではD5あたりが高いなぁという感じをうけます。僕自身は男なので感覚として分からないのが正直なところですが、既成曲を聴いていても、カラオケで聴いていても、やはりD5くらいが地声の限界のような感じがします。
D5を超えて地声で出している曲って、ほとんどないですね、少し調べてみましたが、見つけるのも大変でした。
例えば、D5の音は以下のような曲で出てきます。
- FACE/globe 「鏡に写った〜」の”った〜”
- 愛をこめて花束を/Superfly 「愛をこめて花束を」”な”
- 蝶々結び/Aimer 「結び目は固く」の”め〜”、「結んでいてほしいの」の”し〜”
- そばかす/JUDY AND MARY 「想い出は〜」の”で”
どれも充分に高い音ですよね。
地声でD5を超える曲はほとんどありませんでしたが、こういう感じです。E5で地声はすぐには見つかりませんでした。(ファルセットやミックスボイスはありましたが)
- D#5 Into the unknown/松たか子・中元みずき あの有名なロングトーンです。
- (Let it go も同じくD#5)
- D#5 ロマンスの神様/広瀬香美 「ロマンスの神様」の”ろ〜”の音です。
女性の低音域
男性の低音域でも書きましたが、低い音を発声するのは、圧を抑えながら声帯を振動させないといけないので、とても出しづらいです。女性の低音もかなり辛いのではないでしょうか。空気量を抑えると声にならなくなってきます。F3前後が低音の限界になってくるのではないでしょうか。
女性が気持ちよく歌える音域
女性が気持ちよく歌える音域は、主観も入りますが、D4〜C5くらいの音域だと思います。この音域だと自然に大きな声で気持ちよく歌えると思います。
サビの音域
さて、男女の音域がある程度わかったところで、一方で、一般的な曲のサビの音域について見てみます。
もちろん男性曲と女性曲で違うわけですが、図の青と赤で塗り潰しているあたりが、概ねサビとして登場する音域です。もちろんこれより低い音も多く使われていますが、多くの場合は、低い音は次にくる高い音へのアクセントとして登場するケースが多く、サビらしい音域はこれくらいの高い音域ではないでしょうか。
男性の曲ではB3〜G4くらい、女性の曲ではF4〜D5くらいですね。正確にこの範囲というよりは多少の前後は当然あるので、大体これくらいの音域と見てもらえればと思います。
ハーモニーが気持ち良い音域
次にハーモニーが気持ち良い音域です。こちらも、大体このあたりの音域というイメージですが、緑の領域で2音が鳴っていると気持ちよく協和感が得られて、気持ちの良いハーモニーと感じられます。
低音のハーモニー
ハーモニーとは不思議なもので、低音すぎるとその協和感を感じづらいのです。例えば、ド・ミの長3度の音程について、低音域であるC2・E2を鳴らしてみたときと、高音域であるC4・E4を鳴らしてみたときでは、後者のほうが気持ち良く聞こえるのです。
低音になるほど、音程の狭いハーモニーは綺麗に聞こえなくなっていきます。逆に音程を広げるほどハーモニーが綺麗に聞こえるようになっていきます。低音域では長3度よりも完全5度などのちょっと広めのハーモニーのほうが気持ちよく聞こえる傾向にあるのです。
さらに低音域では完全5度よりも完全8度(=オクターブ)のほうが綺麗に聞こえるのです。
ピアノなどの楽器をやっている方はわかると思いますが、左手はオクターブや完全5度を弾いて、右手で3度を含む和音を弾くケースが多いのです。
ちょっと話がそれましたが、低音のハーモニーは3度ではハーモニー感は薄くなり、また完全5度や完全8度だったとしても、ハーモニー感は出るものの、図太いハーモニーになり、あまり美しい煌びやかなハーモニーにはなりません。
高音のハーモニー
逆に高音になるとどうでしょうか。上記の図の緑の領域を超えて、さらに高音でハーモニーを鳴らすと(ただでさえキンキンな音になっていくのに)キツイ響きのハーモニーになっていって、これもまた緑の音域に比べると協和感は弱いかと思います。
僕の経験則上、緑の領域に2音が存在する場合に、とても気持ち良いハーモニーが生まれるのです。
男性曲をハモる
男性曲のサビパートをハモることを考えてみます。以下の図はサビの音域に対して、オーソドックスな3度ハモりをした場合の音域を表したものです。紫色の音域ですね。上下に3度ずらして描画しています。
男性曲を女性がハモる
男性曲のサビに対して、女性が「気持ち良く」歌えるレンジでハモろうと思うと、3度上ハモりがちょうど良いというのが分かるでしょうか。”3度上ハモり”と女性の”気持ち良い”音域が大体合っているのです。さらにその音域は”ハーモニーが気持ち良い”音域でもあるので、男性曲のサビに女性がハモろうと思った場合は、3度上がちょうどよいとなります。
このような曲には以下のような曲があります。
- 366日/清水翔太 feat.仲宗根泉
- さよならの前に/AAA
男性曲に女性がハモる時の注意点としては、女性の声の方が声質的に目立ちやすいので、上手く合わせないと、主旋律を潰してしまいます。この観点では難易度が高めのハモりだと思います。
元々男女のアーティストや、ユニットでハモっているケースはありますが、普通の男性アーティストに女性のハモりが入っているケースは珍しいです。
男性曲を女性がハモる場合には、ハモりのメロディラインを歌うというより、コーラス的に薄く乗せるくらいがちょうど良いのかもしれません。
男性曲を男性がハモる
男性曲のサビに対して、男性が「気持ちよく」歌えるレンジでハモろうとすると、今度は3度下ハモりがちょうど良いです。3度上では高すぎてしまい、その曲の最高音でハモることが難しくなってしまいます。もちろんファルセットでハモったり、あるいは最高音はハモらずにサビの出だしだけハモるなどの構成で工夫することも可能です。
男性曲の男性下3度ハモり
ハモりやすいのは3度下ハモりだと思いますが、このような曲の例としては以下のような曲があります。(すべて3度ではなく、実際は3度や4度などを織り混ぜながらのハモりになります)
- しるし/Mr.Children
- HAPPY BIRTHDAY/back number
- ワタリドリ/Alexandros
このパターンは男性アーティストや男性ボーカルのバンドに多い印象です。オーソドックスなパターンなので数多くの曲でこういうハモりがされています。
男性曲の男性上3度ハモり
男性曲を男性が3度上でハモるような、とても高音のハモり曲もありますが、一般の人には高音過ぎて出ないでしょう。もちろん頑張ってトライしてみるのも良いと思います。例えば、こんな曲です。
- いつか/ゆず
- 永遠にともに/コブクロ
- 馬と鹿/米津玄師
やはり、高音ボーカルのユニットなどが多いですが、このパターンはそれほどは多くないと思います。非常に高くなってしまうからです。
女性曲をハモる
女性曲をハモる場合を考えてみます。男性のときと同様に、女性曲のサビの音域に対して、3度上と3度下の音域(紫色)を記載しています。
女性曲を女性がハモる
男性のときと理屈は同じで、3度上のハモりを入れようとすると非常に高くなってしまうため、オーソドックスなのは3度下にハモりを入れるパターンです。なお、女性ボーカルの3度上をさらにいこうとすると、高音すぎて上図の緑の「ハーモニーが気持ち良い」音域を超える場合が出てきます、こうなるとキンキンして気持ちの良いハーモニー感が失われてしまいます。もちろん、サビの中でも低い箇所では、アクセント的に3度上のハモりを入れるようなケースもありますが、メインで3度上ハモりが連続するような曲はほとんど無いと思います。
ということで、オーソドックスなのは3度下で、例えば以下のような曲がこのパターンです。(もちろん3度といっても、実際は3〜4度あたりでラインはできています)
- 紅蓮華/Lisa
- マリーゴールド/あいみょん
- Darling/西野カナ
このパターンは女性ボーカルの曲では非常にオーソドックスで、こういうハモり方をしている曲は多いと思います。
女性曲を男性がハモる
さて、女性曲を男性がハモるパターンです。女性曲の3度上は普通には出ないので、まず最初の選択肢としては3度下ということになります。しかし、図を見て分かるとおり、3度下ハモりであっても、男性の「気持ち良い」と感じる音域を遥かに超えてしまいます。男女の音域の差は結構あるので、どうあがいても高いのです。
女性曲の男性下3度ハモり
女性曲に男性がハモる場合、一般的には下3度であっても高いのですが、そもそも音域が低めの女性曲に対して、高音男性ボーカリストが3度下で合わせているような曲もあります。曲の音域が低めで、男性のハイトーンという条件になるので、こういう曲は多くはありません。
例えば、以下のような曲はこのパターンになります。
- あなたと/絢香×コブクロ
- 世界中の誰よりきっと/中山美穂&WANDS
- 冬のファンタジー/カズン
女性曲の男性上3度(6度下)ハモり
さて、女性曲の上3度ハモりを男性がしようとしても普通には出ない、と言いましたが、 実は裏技的に実践する方法があるのです。簡単です。オクターブ下でハモれば良いのです。(意識せずとも3度上ハモりをしているつもりで、実はオクターブ下になっているという場合がほとんどですが)
どういうことかというと、下の図を見てください。
3度上ハモりだと高いので、それをオクターブさげて歌うということで、とても気持ちの良いハーモニーを得られます。上図にある通り、3度上のオクターブ下は、つまり6度下になるのです。この度数の関係が分からない人は、こちらの投稿を確認してみてください。
6度下ハモり(実質的な3度上ハモり)は、黄色い音域ですが、これは男性が歌うには「気持ち良い」音域になるのです。
また、女性のサビの音域と、この実質3度上の黄色い音域は、緑の「ハーモニーが気持ち良い」音域に概ね入ってくるのです。ですので、このパターンのハモりは無理がなく、とても美しいハーモニーになります。さらに、主旋律を女性が歌って、ハモりを男性が入れるという構成がまた声質的にも相まって、美しさを増すと思っています。
このような曲の例としては以下のものがあります。
- 三日月/絢香
- 未来予想図Ⅱ/DreamsComeTrue
- 点描の唄/Mrs.GREEN APPLE(feat.井上苑子)
※実際はサビを下6度ハモりで入って、下3度ハモりに移行しています。
ハモる音域についてまとめ
最後にまとめると、ハモりを気持ちよく歌って、綺麗なハーモニーを作り出すためには、以下のようなことを意識してハモることが必要だと考えられます。
ハモる音域について意識すること
- ハーモニーが気持ち良い音域に2音を収める
- 収まらない場合はオクターブ変えてみる(3度から6度へ)
- 低すぎず、高すぎない音域でハモる
- 上3度か下3度かは、男性女性の組み合わせである程度決める
- 女性の上ハモは気をつけよう(主旋律潰し)
- 3度・6度ではなく、4度・5度でだってハモれる(←説明していませんがw)
自分でハモりを作るときの考え方
自分でハモりラインを作ったり、即興で歌ったりする際には、以下のような音域の取り方をするとハモりやすいでしょう。
■女性曲を女性がハモる
→ 下3度のライン
■女性曲を男性がハモる
→ 下6度(上3度)のラインを優先、難しければ(高いけど)下3度
■男性曲を女性がハモる
→ 上3度のライン。ただし歌い方に注意して主旋律潰しにならないようにする。
■男性曲を男性がハモる
→ 下3度のラインが優先。ハイトーンハモりを狙うなら上3度もアリ。
なお、余談ですが、声質でいうと女性の声のほうが通る(高周波成分の音質)ため、主旋律向きであって、男性の声のほうが柔らかい声になりやすい(ミドルレンジの音質)ため、ハモり向きだと思います。
今回はだいぶ長文になってしまいましたが、ハモりの音域について考察してみました。いかがでしょうか、参考になれば嬉しいです。
それでは、また!
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